一日じゅう料理するのにも、ようやく慣れてきたが、家に帰ったら疲れ果てて眠りこけてしまう。
よって、このブログを書くのにも、ずいぶん時間がかかってしまった。
お客さんが、以前に増して来るようになったのが救いだ。でも、必死に稼いだ金は、家賃や人件費、メンテナンス費などに消えて、未だに私たちの給料はでていない…..。
そんななか、店を初めてから3回目の釣り銭詐欺に遭った。
1回目はブログのこの記事にも書いた、1レアルを掴まされた件。
2回目は2週間ほど前。一緒に働いている姑が、近所の弁護士事務所に料理の宅配を頼まれていったところ、「手もちが500ペソの高額紙幣しかないので、つり銭を用意してほしい」といわれた。
事務所のある雑居ビルについたら、「いま事務所にいってお金もってくるから、先につり銭を渡してくれ」みたいなことをいわれて、まんまとつり銭350ペソを渡したところ、そのまま金を奪われ、逃走された。(そこに弁護士事務所あるというのも、もちろん嘘)
3回目は先週、40代くらいの女性が持ち帰りで50ペソの春巻きが欲しいといい、500ペソで支払ったのだが、姑が450ペソのおつりを彼女に渡したところ、「250ペソしかおつりをもらっていない。200ペソ足りない」と彼女はいう。姑は「確かに450ペソ渡した」と主張したが、その女性はかばんも持っていなかったし、上着もはおってなくて、小さな小銭入れしかもっていない。服のポケットやその小銭入れを大げさに見せて「ほら私200ペソをもらってないよ。どこにも隠していない」といっていて、どうもおかしいと思い、私がじっとにらんだら、怪しまれたのに気がついたらしく、「おつりがないなら、いま夫に細かいお金がないかきいてみる。5分で戻るから」といったまま、去って行き、けっして戻ってくることはなかった。もちろん、私たちは、また騙されたのだった。
姑は、あふれんばかりのひとの良さみたいなのが災いして、私生活でもよくひとに騙されているようだ。
今回は、あまりにも立て続けに騙されたので、姑も意気消沈してしまった。
彼女の持病に影響があるので、今後は頼るわけにいかない。
そんなわけで、先週から新たにバイト君を雇って、姑には週一回だけ出勤してもらうことにした。
カツカツの経済状態で、騙されたことは悔しいけれど、3回目に騙されたあとには、なんだが笑いがこみ上げてきて、怒る気もしなかった。
いつバレるかしれないリスクを背負いながらも、丁寧な芝居をうつひとたちのことを、どうも心からは憎めない。テレノベラ(メキシコおよびラテン圏の連続テレビドラマ)俳優たちよりも迫真の演技で、私たちはすっかり煙に巻かれたのだ。見事としかいいようがない。
そんなときに、メキシコは国をあげて、年末安売りキャンベーン「BUEN FIN(ブエン・フィン=良い週末)」を開催中だった。
国の経済効果をあげるための、米国のブラック・フライディの真似なのだが、指定された週末の3日間で、ショッピングモール、デパート、スーパーなどの商業施設、飲食業、旅行業などなどで、特別安売りセールが開催される。この期間は、メキシコでショッピングの売り上げが最高に達する。でも、なかには、ブエン・フィンの期間にむけて元の値段をつり上げておきながら、50%オフと謳い、実際にはほとんど割引がない商品なんてものも、ざらにある。ひとびとの購買意欲をそそるために、ありとあらゆる手で詐欺まがいのプロモーション合戦が繰り広げられる。
もちろん、私たちもそれに踊らされた者たちに入る。業務用スーパーCOSTCOが、ブエン・フィンの期間に買い物したら、手数料なし12回払いときき、この機会に少しでも月々の出費が減るように買い物しておこうと目論んだのだった。結局12回払いにするには、2000ペソ以上の高額の買い物をしなければならないことがわかり、まんまと騙されたことに気がつく。そんなわけで、私たちはトイレットペーパーとポテトチップの大きな袋だけ買った。
そのCOSTCOのある場所は、世界一の富豪、カルロス・スリムが所有する土地である。
大きなショッピングモールやスリムがコレクションした、世界じゅうの美術品が所蔵されたミュージアムや、水族館もあり、豊かさと品の良さをアピールするような場所。
この風景を米国といっても誰も疑わないだろう。
そんな場所をウンコと思いながらも、騙されて、尻を拭くための紙を買いにきている私たちって何なのだろう。
このまま、ソフトに騙され、踊らされ、目を回し続けていくしかないのか。
私たちは、目に見えない相手から騙されているのに気がつかず、少しずつ毒を盛られて、死んでいくのだろう。
そう考えたら、ひととひとが向かいあって騙しあっているうちは、まだ救いがあるような気がする。